外国為替市場の不都合な真実

ヘッジファンド等のプロのお客さんや同僚のディーラーは、「専門家」の予想を全く聞いていません。メディアに流れている情報は想像と妄想、ねつ造と勘違いばかりです。なぜ皆さんは信じるのですか?

プロフィール

富田 公彦

Author:富田 公彦
中西けんじ参議院議員(自由民主党:神奈川県選挙区)秘書
元JPモルガン・チェース銀行為替資金本部副本部長
1980年東京大学経済学部卒
富士銀行入行(1986年退職)
以後、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ステート・ストリートなど米系金融機関に通算26年勤務
2013年金融市場から引退
ケイマン籍ヘッジファンドの経営には失敗(^_^;)シマッタ

<著書>
「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」
(経済評論家・山崎元氏の書評)

「為替ディーラーの常識非常識」(共著)

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ご質問への回答です

2016.12.22

category : お役立ち?情報

ツイッターでご質問を頂戴したのですが、回答が長くてリツイートするととんでもないことになりそうなので、こちらに記載させて頂きました。


1)富田さんの言う 「普通の外国為替市場」 というのは、インターバンク取引のことでしょうか?

――はい。その通りです。IMMとはケタの違う規模の市場です。


2) 「インターバンクは基本的に直接取引なので、大口ファンドのポジションはわからない」
ということになるでしょうか?
  
――誰も他人のポジションは分かりません(細かい説明は後ろに書いておきますね)。

そもそも他人のポジションを知っても何の役にもたたない世界です。あまりに規模が大きすぎるので、 「大口ファンド」 と言ってもワン・オブ・ゼムです。
外国為替市場は、経済学が想定する完全競争市場に近いものです。ヘッジファンドの皆さんも、その事は百も承知なので非常に謙虚でしたよ。

余談です。
個別株の市場は為替に比べるとけた違いに小さいですから、ちょっと大玉を振ると影響力を行使できるので悪い事をしていると言う噂を聞いた事がありますが、、、、

――冒頭 「分からない」 と一般論でお答えしましたが、実は個別ファンドのポジションが分かっている人がいます。ファンドのリスク管理をしているプライムブローカーです。ただ、強烈な守秘義務の下にありますから、これが外に出る(漏れる)事はありません。
本にも書きましたが、ポジションどころか「○○が売った/買った」と言う情報を漏らしただけでクビになったディーラーがいます(事実です)。ましてや 「管理部門」 の人間にとっては、情報を漏らすインセンティブはゼロですね。

3) 「IMMやFX業者の統計から、小口取引の傾向はわかるが、為替の動きに影響ない」
ということになるでしょうか?

――はい。傾向は分かりますね。
ただ冒頭に申し上げた通り、 「完全競争市場」 で 「一部の人たちの取引の傾向」 が情報としてどこまで有益なのかは疑問です。

気にしても構わないのですが、世界は広いですよ。とんでもない金額を振り回している人達がウロウロしています。従って、こういった統計から 「投機筋は、、」 と一般化してしまうのは危険です。

ちょっと脱線します。
守秘義務があるのであまり細かいお話が出来ないのですが、私のいた金融機関では、ビッグデータ解析を使って、 「短期の投機筋」 と 「もう少し長いタイムスパンで動く中長期の投機筋」 のポジションをつかんでいました(もちろん完全ではありませんが)。
面白いことに、ある通貨に対して 「短期」 がロング、 「中長期」 がショートなどと正反対のポジションになっている現象が見られたりもしました。

こう言う世界を見ていますから、 「投機筋のポジションが○○なので、相場はこうなるだろう」 などと言っているのを聞くと 「あらま(笑)」 と思ってしまいます。

しかも公表されているIMMのポジションは、 「1週間前のある一時点」 の写真の様なものです。
「短期の投機筋」 の 「1週間前」 のポジションがどうのこうのと言うのは、変な会話だと思います。わたしには 「冷たい熱湯」 と言っている様にしか聞こえません。

コロコロ変わるからこそ、 「短期筋」 だと思います。百歩譲って参考にするならば「2週間前と1週間前の変化」ぐらいですね。いずれにせよ1週間前の昔話をされても困ってしまいます。

さらに言えば、 「知られても、実際にIMMで取引している人達に何の悪影響もない」 から公表しているのだと思います(思っていました)。
これに、どれほどの意味があるんでしょうね?


4)為替にも、先物主導で動くようなことがあるのでしょうか?(ヘッジファンドは、為替の先物を多用していますか?)

――「先物」 の定義の問題になってしまいますが、そもそも株式の様な 「先物取引」 は存在しません。似ているものとしては 「通貨インデックス」 だと思いますが、通貨インデックスそのものを取引する場はありませんね。

「取引所」 があればなんとかなるかもしれませんが、外国為替取引所と言う 「物理的に限られた場所」 が存在せず、不特定多数の参加者が勝手につながった電子空間(昔は電話空間でしたが 笑)にあるバーチャルな市場ですから無理ですね。
と言う事で、イメージされている様な意味での 「先物主導」 は存在しません。

もう少しご説明すると、そもそも個人の皆さんが店頭で外貨を売ったり買ったりして、その場で決済するのが 「現物」 だとしたら、すべての外国為替取引は 「先物」 となります。
売買の基本となっているスポット市場の受け渡しは「2営業日後」ですから、先の話ですよね。

いずれにせよ 「2営業日後受け渡しのスポット取引」 以外の取引をする意味もなければインセンティブもなく、そもそも物理的に不可能と言う事になります。

これに反しているのがIMMです。
「2営業日後」 ではなく、 「特定の受け渡し日」 を設定して差金決済を条件として取引をしています。
我々が実務で一般的に使う 「先物取引」 と混乱を生じない様に、この種の取引を 「先渡し取引」 と呼ぶ事もありました(ほとんど無視していたので、この用語を知らないディーラーも多いと思います)。
英語だとフォワード (forward) とヒューチャー (currency futures) と、明らかに名称が違いますから分かり易いですね。

いずれにせよ、圧倒的に大きいのは 「普通の外国為替市場」 ですから、彼らはこちらに合わせる必要があります。そうしないと裁定取引でボコボコにやられますから(笑)。90年頃まで、彼らをカモにして大儲けさせて頂いていましたよ。

毎日 「2営業日後から設定している受け渡し日までのスワップポイントを計算して、普通の外為市場のスポット取引の水準にそれを足したり引いたりして換算しながら」、しかも逆数(1円=●.●●●●ドル)で取引する なんて、アホらしいと思いませんか?

インターバンクと同じ表記と同じ2営業日後で売買が出来る個人のFX取引の方が、ずっと恵まれていると思います。

80年代に 「鯨の皆さん。そんなタライじゃなくて、こちらにいらっしゃい!」 と営業して成功した事は本に書いた通りです。だから、 「あんなところに大口のヘッジファンドはいません」 と断言出来ると言う訳です。

いない理由には、プライムブローカーと言うシステムの問題もありますが、いずれにせよあそこにはいませんね。

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為替相場予想って何?

2016.12.20

category : お役立ち?情報

「相場予想」を語る前に、昨年出版した 「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」 と言う本の 「あとがき」 のオリジナルをご紹介させて頂きます。

紙数の関係で、実際に出版したものは短縮版となっています。確かにちょっと長いですね(苦笑)

+++++++++
 プロ野球の選手は、 「プロの素晴らしいプレーを見に来てください」 と言います。この場合の 「プロ」 には、 「超人」 へのあこがれをくすぐる心地よい響きがあります。
 わたしはプロのディーラーでした。ただ、そんな超人ではありません。 「気がついたら、三十年以上も泳いでいました」 と言うだけのシーラカンスです。

 全盛期でもメカジキやマグロのように、速く泳げた訳ではありません。 「せめてカツオのレベルに」 とか 「マンボウやヒラメに抜かれてたまるか」 などと、必死にそして最後までヒレを動かしていただけです。 「長くいたので、いろいろとくわしいですよ」 と言うこと以外に、これといった取り柄はありません。

 引退したあとは、外国為替に限らず金融市場に関係することからは一切手を引いていました。外国為替市場は、人生の大半をすごしてきた場所です。離れがたい思い出の地です。しかし、老兵を自覚した頃から、若いみなさんの前からはいさぎよく消えるべきだと考えていました。

 実は、いつもかよっていたオフィスの前を、今も通っています。旧知の国会議員のお手伝いの為に、永田町にお邪魔する時のルートに当たっているからです。ただ、ディーリング・ルームのドアをたたいたことは、一度もありません。

 もちろんFXに手を出すこともありません。レッスン・プロがオーガスタ (ゴルフのマスターズ・トーナメント) に出場したら椿事です。ウィンブルドンでプレーをするのは、錦織圭選手です。マイケル・チャンコーチではありません。

 そうやって距離を置いていました。

 しかし、今の外国為替市場、特にあまり知らなかったFXの状況を目にする機会に偶然遭遇してしまいました。そして思わず 「ひどい」 と言ったあと、言葉を失いました。

 リスクをとれば、損失が出ることはあります。しかし、本当のことを知らない内に、みなさんのおカネが九分九厘消えてしまうような勝負はフェアではありません。そのことをお伝えする為に、この本を書きました。 「為替の業界人」 と言う入れ墨は、まだしっかりと入ったままです。きっちりと仕事をさせて頂きました。

 本書で 「プロ」 と言う単語を使うことには、非常に抵抗がありました。わたしは、ただの 「くわしい人」 「長くいた人」 です。

 しかし、自分自身を含む業界人を、あえて 「プロ」 と表現しました。業界内の人間と一般のみなさんの置かれている環境には、どうしても克服することができない大きな差があります。その事実を、みなさんの記憶にしっかりととどめて頂きたかったからです。

 株式市場は歴史が長いだけに、 「株で大損をして、先祖伝来の家や土地を手放した」 「一家離散になった」 などと言うことが小説や映画、演劇などに再三登場してきました。そのせいでしょうか、自分の子供に 「株にだけは手を出しちゃいけませんよ」 と教える親御さんも多いようです。若干いきすぎだとは思いますが、いたし方のないことかもしれません。

 一方、歴史の浅いFXに関しては、世間のみなさんのあいだに、そのような負の経験の蓄積がありません。 「FXにだけは手を出しちゃいけませんよ」 と教える親御さんは、まだいらっしゃらないでしょう。

 しかし、プロの世界では、すでに大勢の犠牲者が出ています。負の経験の蓄積は、もはや十分すぎるほどにあります。そのことを正しく伝えるのが、変動相場制移行以来四十年あまりの歴史を見てきた人間の責任です。

 あたかもFXで簡単に稼げるかのような、そんな幻想をいだかせることは慎むべきです。プロは素人をあざむいてはいけません。

 もちろん、これからも 「FXで億万長者」 と言う個人はかならず出てきます。しかしこの方の誕生は、数百万人と言う巨大な母集団から確率論的に推定されていることです。次は、今この本を読んでいらっしゃるあなたかもしれません。

 ただ、その幸運が舞い降りる確率は、宝くじに当たるのと似たようなものです。

 あらためて申し上げます。悪いことは言いません。FXには近づかないでください。みなさんの来るべきところではありません。

++++++++++++

長々と引用したのは、私の基本的なスタンスをご理解頂く為です。

あくまで 「FXには近づかないでください」です。

ただ、世の中 「分かっちゃいるけどやめられない!」 ものは多いですよね。
たとえば、体に悪いと分かっていても、私はお酒がやめられません。結構沢山飲みます。それと同じ様に、なかなかFXから足を洗えない方もいらっしゃいますよね。

この先はそんな方の為のメモです。メモですからあくまで「ご参考」程度にお読みください。

まず、 「FXが資産運用の対象となる」 と言う誤った認識を持たない様にお願いいたします。

株や債券は 「資産」 ですが、為替は 「単なる2つの通貨の交換比率」 でしかありません。丁半バクチみたいなものですから、投機の対象とはなっても投資には不向きです。


また、 「為替相場の予想ができる」 などと言うのは幻想です。

少なくとも私自身は、「相場予想で成功した」と言う記憶がありません。ましてや引退していますから、「為替相場はどうですか?」と聞かれても「分かりません」としかお答えしていません。

ただ、 私の様なボンクラはさて置き、 「為替で相場を張って成功した人」 はいますから変ですよね。あくまで私の個人的な経験則ですが、成功した人のタイプは3つです。


1)天才君
なぜか相場が読めてしまう人がいます。本にも書いたのですが、「上値が重い」「下が固い」「抜けた!」と言った事が感覚的に分かる人達です。
私の様な2流のディーラーには、何で重くて、固くて、抜けたのか全然分かりませんでしたが(苦笑)。

ちなみに、彼らは数年間華々しく活躍した後、「相場とズレた」と異口同音に語って業界を去っていきました。あくまで第六感の世界なのだと思います。


2)局地戦の戦士
ファンダメンタルズ型のヘッジファンドや、為替そのものでの収益を狙っているプロの運用者は、このタイプです。

「『為替相場の予想ができる』 などと言うのは幻想です」 と書きましたが、これは「汎用性のある予想など不可能だ」と言う意味です。
たとえば、24時間、3日、1週間、1か月、半年、1年の相場のすべてに適用できる予想手法や予想モデルなど、作れるはずがありません。彼らもそう言っていました。私もそう思います。

しかし、彼らは 「勝負するタイムスパンをきちんと設定すれば、その間に考慮すべき情報や分析手法、どう言う形で相場に突っ込むかと言った手法は自ずと限られてくる」 と考えています。

ありとあらゆる事が為替相場に影響してくるのですが、その中から 「想定したタイムスパンに限って影響の強そうなもの」 を選び出すと言う作業をする訳です。ある種の 「単純化」 とも言えるかもしれません。
さらに、それに最適なトレーディング・テクニックを組み合わせると言う訳ですね。

「単純化」 と書いてしまいましたが、実は膨大な作業をしています。いずれにせよ、よくメディアで専門家が語っている 「ドル金利が上がったから、、」 「株が買われたから、、」 などとは違う次元の世界である事は間違いありません。

私がカスタマー・ディーラーとしてお手伝いをしていたのは、このタイプの皆さんです。


3)純粋モデル型(システム・トレード型)
数学や物理学、統計学、経済物理学などなどの天才を集めたヘッジファンドがやっている手法です。

為替取引がシステム化&デジタル化し、コンピューターの能力が飛躍的に高まった為、10年前には想像もつかなかった解析が可能となっています。
彼らは、我々が 「ティック・データ」 と呼んでいる 「全取引データ」 を使います。いわゆるビッグ・データ解析ですね。

実際にどうやっているのかは教えてもらえなかった、、、、と言うより、聞いたんですが正直言って理解不能でした。一応、私は理系だったんですが(苦笑)。

従って、これは私の推測でしかありませんが 「膨大なデータから統計的に有意なパターンなどを探し出し、それが再び出現する(データはあくまで過去のものですから)確率に照らし合わせてポジションをとる」 「その判断にはA.I.を活用し、解析にはスーパー・コンピューターも使う」 様です。
理解不能だったので、この程度のご説明しか出来ませんm(__)m


何だかとりとめが無くなってしまいましたが、今世間で流れている様な 「相場予想」 とは無縁だと言う事はご理解頂きたいと思います。

ましてや、 「ヘッジファンドが仕掛けた」 「IMMのポジションから投機筋は、、」 「移動平均線が、、RSIが、、フィボナッチが、、」 などと言った世界など、どこにもありません。
「テクニカル的には、、」 なんて、少なくとも為替の世界では21世紀に入った頃には死語だったはずです。

今、メディアに出てきている専門家の話している事は、私が1980年代に話していた事と全く同じです。だから、先日書いた通り 「ガラパゴス」 と言う事になります。

ガラパゴス諸島の皆さん限定の外為市場を作れば、面白いかもしれませんね。

ガラパゴス化した東京外為市場

2016.12.02

category : お役立ち?情報

先日、最後まで東京で頑張っていた昔の同僚が、「シンガポールでファンドをやります」 とわざわざ議員会館まで挨拶に来てくれました。

「東京じゃダメ?」
「ダメです」
「規制とか制度の問題?」
「違います」
「だったら、東京でやろうよ」
「夢がないんですよ」
「?」
「私が若い頃には、『あんな風になりたい』 と憧れたり、尊敬する人達が市場にいました。でも、引退したり東京を離れたりしてしまって、もう誰もいません。そんなところじゃつまらないですよ」
「シンガポールには、そう言う人がいる?」
「はい。富田さんだって、ご存知じゃないですか。最先端でとんがっている人達のそばにいないと、進化しませんから、、」
「たしかに、、、」
「東京は、もうガラパゴスですよ」


たしかに東京外国為替市場の関係者、特に金融機関の人間の発想や発言、分析などは、四半世紀以上前とほとんど変わっていません。要するに25年以上、全く進化していないと言う話です。

たとえば、

「ヘッジファンドが休み前に手仕舞う」

「テクニカル的に半値戻しがメドになる」

「IMMのポジションでヘッジファンドの動きが分かる」

「移動平均線からのかい離が大きいので調整が入る」

「RSIが80を超えたから調整が入る」

こんな話をヘッジファンドや機関投資家にしたら、即日出入り禁止=取引停止です。

ただ、日本の金融機関は、元々彼らから全く相手にされていませんのでその心配はありません。

しかも 「日本語」 と言うバリアで守られているので、馬鹿なことをいくら言っても 「おかしい」 と指摘される心配もありません。

国際金融は、非常に残念な事に完全に英語の世界です。ただ、そのおかげで 「守られている」 と言う情けない話です。

要するに、「残念ながら、外界の刺激を受けて進化するチャンスが無かった」 と言うことですね。

彼の言う通り、これはもう 「ガラパゴス諸島」 と呼ぶべきでしょう。


そんなガラパゴスの珍獣たちが、メディアで情報らしきものを垂れ流しています。

視聴者や読者の皆さんは、それがどんなにおかしなものかを知る機会がありません。わたしがいくらブツブツつぶやいても、ほとんど届いていないでしょう。

メディアの裏に関しては、前回某TV局のプロデューサーとの実話でご紹介した通りです。

「これでもメディアに出てくる『専門家』を信じますか?」


あれが世界の外国為替市場の関係者の標準的な考え方だなんて、絶対に勘ちがいしないで下さいね。

ガラパゴスですよ。

これでもメディアに出てくる「専門家」を信じますか?

2016.09.07

category : お役立ち?情報

ようやく選挙モード・戦闘モードから通常モードに戻ったので、旧知の某TV局のプロデューサーが祝勝会も兼ねて食事に誘ってくれました。

(プロデューサー:以下P氏) 「本の中で、『金融機関とメディアは持ちつ持たれつ』って書いてましたよね?」
(富田) 「ええ。もっと言うと、『中身なんてどうでもよくて、会社の名前が出れば良い。番組枠とか紙面が埋まれば良い』 と言う世界でしょ?」
(P氏) 「実はその通りなんですよ」
(富田) 「絶対にまずいですよ。一般の人は、『真っ当なメディアで流れた』 と言うだけで信じちゃいますから」

<メディアはガセネタ垂れ流し>
(P氏) 「発言内容の質を評価できるディレクターがいないんですよ。金融市場の話になると、完全にお手上げですから拝聴するしかありません」
(富田) 「大手のメディアって、デパートと同じだと思うんですよ。『三越が売っているのなら一級品だ』 って信用しますよね。あれは、『三越がちゃんと中身をチェックしているから』 と言う信頼感に基づくものでしょ。それなのに、『中身を評価できない』 じゃ困りますよ」
(P氏) 「でも、それが現実なんですよ。『市場で本当に何が起きているのかは、誰も分からない』 って、富田さんも書いてたじゃないですか」
(富田) 「あれは、『全体像』 の話ですよ。断片的ではあっても、『確かな事』 はあります。その範囲内で、『きちんと解説と分析をする。想像で物は言わない』 と言うのがプロの世界の常識です。いい加減なことを言ったら、取引停止処分をくらいますし退場処分もありますから」
(P氏) 「視聴者には、『いい加減かどうか』 の判断がつきませんから、そう言った自浄作用は働かないですね。こちらも番組枠を埋める方が先決なんで」

<まともな専門家は出てくれない>
(富田) 「それにしても、もう少しまともな専門家を選べないんですか?○○さんとか、××さんだったら、きちんとした話をしてくれるはずですよ」
(P氏) 「富田さんもそうでしたが、そう言う方は 『まとまった時間をくれ』 とおっしゃるんですよ。短い時間で断片的な話をして誤解を招きたくないからだと思うんですが、こちらも常に10分とか15分、ましてや30分と言った枠は出せないんで、、、、」
(富田) 「それにしても、最近は質の低下がひどくないですか?△△銀行とか□□証券なんて、信用度が低いんでメジャーな外国為替市場には参加出来ないですよ。JPモルガンとは取引出来ませんし、ヘッジファンドや機関投資家からは相手にされていません。個人投資家と同じ環境にある会社の人間が、『専門家でございます』 って出てくるのはおかしいですね]

<出演者を売り込む金融機関>
(P氏) 「実は金融機関から、『ウチの人間を出演させてくれ』 と言う売り込みがあるんですよ」
(富田) 「それって単なる会社の宣伝ですよね」
(P氏) 「そうですね。ただ、こっちとしても枠を埋めてくれる便利さがあるもんで、ついついお願いしちゃうんですよ」
(富田) 「だ・か・ら、そんな人を出したら、△△銀行とか□□証券みたいな三流・四流のプレーヤーに、メディアがのしをつけて権威づけしちゃうことになりますよ。結果的に視聴者をだましてません?」
(P氏) 「うーーん、厳しいですね。現役時代と変わってないですね」

<大手も同じ>
(富田) 「その売込みって、もしかして大手もやってませんか?」
(P氏) 「分かります?」
(富田) 「なんとなく。だって、◆◆社の◇◇さんって、とんでもなく予想が外れて、その為に分析も解説も支離滅裂になっているのにあっちこっちに出続けてたでしょ?ご本人は出たくなかったと思いますよ。『ストラテジストは予想屋じゃない』 事に気付いてた感じもしましたし」
(P氏) 「当たりです。会社から『出してくれ』 って来てたんですよ」
(富田) 「気の毒ですね。あの方のストラテジストとしての命取りにならないと良いですが、、、」
(P氏) 「最近はメディアへの露出が減りましたね。『外れたら人前に出ない』 のが、ストラテジストが長生きする秘訣かもしれませんから正解ですよ。たとえば◎◎さんとか、、、」
(富田) 「でも最大の被害者は視聴者ですよ。信じて相場張ったら、間違いなくやられてますから」



Brexitで世界経済に大打撃?!

2016.06.20

category : お役立ち?情報

+++++++++
選挙で忙しくて細かく相場を見ていませんし、海外のネットワークから情報を集めたり指標の分析などもしていません。従って、この見解が正しいと主張するつもりはありません。ただ、長年国際金融の現場にいた人間として、どうも違和感があるので、、、、
+++++++++

「Brexitになったら、世界経済に大変な悪影響が出る」 と、しきりと唱えている専門家がいます。

まあ、長年培ってきたEUとの関係が変わる訳ですから、平穏無事とはいかないでしょう。細かい問題点を挙げていけば、いくらでも出てきます。
「人間が犬に噛みついた」 話を追いかけるのがメディアの宿命ですから、「大変だ!大変だ!」 と言う報道が幅を利かせるのはいたしかたありません。

しかし、専門家たるものもう少し冷静な議論が出来ないのでしょうか?

EUには加盟していますが、イギリスの通貨はユーロではありません。これは非常に大事なことです。

独立した通貨を持っていますから、自由な金融政策をとる事が出来ます。リーマンショックの時に、ユーロ圏はマネーサプライを2倍にしか出来なかったのに、イングランド銀行は5倍に増やして乗り切りました。
金利だって、他の国の顔色をうかがわずに、自国の状況に最適な形で動かすことが出来ました。

あの時、ギリシャや南欧諸国などの事を考えれば、ECBはマネーサプライを5倍に増やしても足りなかったはずです。しかし、ドイツなどとのバランスで2倍に留めたと言う事です。金利はもっと思い切って下げるべきでした。

しかも驚くべきことに、2007年のパリバショック以降怪しい雰囲気が漂っていたのに、2008年7月(リーマンショックのたった2か月前)には 「引き締め」 ています。私は、これがギリシャ危機、南欧諸国の危機につながったと個人的に考えています。

独自の通貨を持たず、自国の経済情勢に合わせて金融政策をとれない悲劇です。

Brexitになろうがなるまいが、イギリスはこれまでと同様に独立した金融政策をとれます。財政政策はもちろん独立しています。つまり、マクロ経済政策的には 「何も変わらない」 と言う話です。


「英ポンドが暴落して大変なことになる」

ご冗談を(爆笑)

80円から125円まで円が大暴落して、日本経済や世界経済は壊滅しました?経済以前に歴史の勉強が足りませんよ。

イングランド銀行がERMと言う今のユーロの前身である固定相場システムから離脱したおかげで、イギリスは金融政策の自由を取り戻し繁栄しました。

こんなハルマゲドン・シナリオを唱えて、一般の皆さんの不安をあおるのは専門家の仕事ではないはずです。

「金融センターがロンドンから大陸 (フランクフルトやパリ) に動く?!」

現場を知らない方の妄言です。国際金融は徹頭徹尾 「英語」 の世界です。

Brexitによってロンドンが数千キロの彼方に引っ越してしまって、とんでもない時差が発生するならともかく、ドーバー海峡を挟んだところから動くことはありません。

ドイツ語やフランス語の都市の出る幕はありません。

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