外国為替市場の不都合な真実

ヘッジファンド等のプロのお客さんや同僚のディーラーは、「専門家」の予想を全く聞いていません。メディアに流れている情報は想像と妄想、ねつ造と勘違いばかりです。なぜ皆さんは信じるのですか?

プロフィール

富田 公彦

Author:富田 公彦
中西けんじ参議院議員(自由民主党:神奈川県選挙区)秘書
元JPモルガン・チェース銀行為替資金本部副本部長
1980年東京大学経済学部卒
富士銀行入行(1986年退職)
以後、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ステート・ストリートなど米系金融機関に通算26年勤務
2013年金融市場から引退
ケイマン籍ヘッジファンドの経営には失敗(^_^;)シマッタ

<著書>
「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」
(経済評論家・山崎元氏の書評)

「為替ディーラーの常識非常識」(共著)

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「黒田ライン」「黒田総裁が円安に警告」ーーちゃんと議事録を読まない専門家

2017.04.27

category : お役立ち?情報

2年前の黒田総裁の国会での答弁を誤解して、いまだに「黒田ライン」とか「黒田総裁が円安に警告」などと言っている専門家がいる事に驚きました。

そもそも為替は財務省の専管事項。元財務省(財務官)の黒田総裁がご存じないとでも思ってるんでしょうか?

「専門家」を自称するならば、少なくとも問題になった質疑の議事録を読んでから発言するのが当然です。

私が信頼し頼ったストラテジストは、「原本に当たらず孫引きで発言するのは無責任」といつも言っていました。

国会の質疑(議事録)はネット上ですべて公開されており、いつでもご覧になれます。

私が国会議員のスタッフだから読めると言う話ではありません。

ちなみに旧知のヘッジファンドから問い合わせがあったので、議事録を翻訳して送って説明したところ「なーーんだ(笑)」と理解してくれました。

私が現役なら、間違いなく「誤報だ」と言うニューズレターを世界中に送っていました。おそらく真っ当な専門家は、競って書いて送信しまくったんじゃないでしょうか?

つまり、ちゃんとしたストラテジストの話を聞くことが出来る立場の皆さん(ヘッジファンドや機関投資家、中央銀行などなど、私が本の中で「プロ」と呼んだ皆さん)は、間違いなく「誤報」だとご存知です。

ところがテレビでこれを見た視聴者の皆さんは、「事実」だと思いますよね?

その結果は火を見るよりも明らかです。


誤報が流されたのは、「衆議院 財務金融委員会:前原誠司議員と黒田総裁の質疑(平成27年6月10日)」です。

黒田総裁は非常に優秀な方です。ちゃんと読むと「今の為替レート」に関しては一切言及していません。

それを正しく修正する形での質疑が行われたのが、「参議院 財政金融委員会:中西けんじ議員と黒田総裁との質疑(平成27年6月16日)」です。

中西けんじ議員と黒田総裁の質疑(要約)

委員会室で黒田総裁の目の前でお聞きしていましたが、終止うれしそうに答弁をされていたのが印象に残っています。

前の週の質疑に関して誤報が流され、それで2円も相場が動いてしまった事が、よほど腹が立ったと言うか心外だったのだと思います。

ご興味のある方は、その時の議事録をご覧下さい(このブログの下の方)。

長いですが、私がいい加減な事を言っている訳ではない事を証明する意味で全文を掲載しました。


お時間の無い方は、一番最後のやりとり、中西議員の

「この実質実効為替レートですけれども、これはよく使う人いるんです。使う人というのは、、、、」

以降をお読み下さい。黒田総裁の真意がご理解いただけると思います。


ちなみに、黒田総裁が

「ただ、この理論を開発した人を私はたまたま知っておりますので、全く無意味だ、一顧だにするなと言われると、そこまで言う必要はないと思いますが、、、、」

と苦笑いをしながらおっしゃったので、委員会室が大爆笑に包まれたのは良い思い出です。

「黒田ライン」なんてありません。

専門家の妄言にだまされて、皆さんの大事なお金をドブに捨てないで下さいね。

今頃気づいたんですが、1年半前に同じ事を書いていました(苦笑)

ちゃんと議事録を読みましょうね(黒田ラインなんてありません)




<議事録の原文、つまり公式文書です>

189-参-財政金融委員会-15号 平成27年06月16日

○中西健治君
 私も、先週の衆議院の財務金融委員会での実質実効為替レートに関する黒田総裁の発言についてお聞きしていきたいと思います。

 答弁そのものというよりも、報道のされ方によってあれだけ為替相場が動いてしまったという思いが黒田総裁には強いのではないかなというふうに思いますけれども、ただ、議事録を確認していく中で、やはりここはちょっと真意を聞いておかなきゃいけないなというところがございますので、そこを中心にお聞きしたいと思います。

 総裁は、理論的にいうと、実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここから更に円安に行くことはありそうにないと、こう発言をされました。

総裁は、一般的にですとか理論的にという枕言葉を多用されて、注意深く議論を行おうとしている姿勢というのは分かるわけでありますけれども、これ、円安という言葉を使ったりしていますので。為替の水準を決定する理論というものは私はないというふうに思っているんです。

その中で、理論的にというふうにおっしゃっていますけれども、それはどういうことなのかということをお聞きしたいと思います。

 私が思うに、総裁がおっしゃっていたことだけで判断すると、プラザ合意前の水準まで来たから、まあこれ以上は行かないだろうと直感的におっしゃっているというふうに思えるわけであります。

普通に考えるとという言葉も使っていましたが、これ直感的にということなんじゃないんですか。そこのところを御説明いただきたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) 
先ほども別の委員の御質問の際に御答弁申し上げたとおりですが、先般の国会質疑で実質実効為替レートについて御質問がありまして、それに対して私から、足下の実質実効為替レートは確かに八〇年代半ばと同程度の水準になっているということを申し上げました。

ただ、その際にも一般的に、理論的にと申し上げたとおり、これが為替レートの水準とか日々の動きを何か占うとか先行きについて何か申し上げたということでは全くないわけでありまして、従来から申し上げているとおり、為替レートの水準、あるいは日々の動きについてはコメントを差し控えさせていただきたいということであります。

○中西健治君 
それだとまだ分からないということなんじゃないかと思うんです。理論的にというのはどういうことなのかということが分からないんです。

 ちょっと私、今日、チャートを一つ配付させていただいております。おさらいですけれども、実質実効為替レートというのは、デフレであれば円の価値が低くなる方向、資料のチャートでいえば下の方向に数値が出てくるというルールで計算される指標であります。

実質というのは、実質金利と同じで、インフレを考慮して計算をした数値というものということであります。

 したがって、このチャートの赤い線、円の実質実効為替レートが実際の為替の変動、これドル・円で一応代表させていますけれども、貿易相手国のウエーテッドアベレージになっているわけで、本来はそうなんですけれども、この緑の線と赤の線を比べて赤の線がずるずると下がってしまっているというのは、日本が長い間デフレ状態にあったという事実を示していることにほかならないというふうに考えております。

もしデフレでなければ、もっとこの赤い線は緑の線に近似していたでしょうし、ワニの口のように広がるということがなかったということなんじゃないかと思います。

 ですので、私が推測するに、総裁が言わんとしたことというのは、二%の物価目標が達成されればデフレは終わります、したがって、他国のインフレ率との兼ね合い次第でありますけれども、理論的というのではなくて、論理的には実質実効為替レートにおけるデフレによる下方向へのバイアス、下方バイアス、これはなくなって、むしろインフレによる上方バイアスもあり得る、これが日銀総裁の真意だったんじゃないんですか。

○参考人(黒田東彦君) 
実質実効為替レートは大変難しい概念であり、これが何を示しているかということについては様々な理論が、あるいは議論があり得るわけでして、価格競争力を示しているのであるとか、いや、逆に言うと、その水準が下がるということは非価格的競争力が低下したので価格競争力がそれを補うように水準が下がっているんだとか、まあいろんな議論があって、必ずしも割り切った議論はできないというふうに思います。

 その上で、一般論として申し上げますと、確かに名目為替レートが変化せずに国内の物価が上昇すれば、計算上、実質実効レートは円高方向、上の方向に向くということにはなるわけですが、一方で、内外の物価の先行きについての見通し、見方が変化すれば名目為替レートにも影響しますので、したがって、一概にどっちの方向に、そもそも実質実効為替レートの動きも一概に言えませんし

、それから、その背後にある為替レート、物価上昇率、そして多国間の貿易関係というのは非常に複雑ですので、基本的に、実質実効為替レートから為替とか物価の動きを予測するということは難しいと。

事後的に、こういう計算ができて、それが価格競争力を示しているとか、あるいは逆に経済の実力を示しているとか、いろんな議論があるんですけれども、いずれにせよ、このものから為替の先行きを予測するということは難しいということに尽きると思います。そういう意味で、理論的な概念というふうに申し上げたわけです。

○中西健治君 
いや、総裁、総裁は理論的という言葉を枕言葉に置いていますけれども、円安に行くかというか、上に行くか下に行くかは基本的に分からないと言っている中で、円安に行くことはありそうにないと言っちゃっているわけです。

そういう言葉を、というか、私、目の前で議事録読んでいるわけですから、そのままずばりを申し上げているわけでありますけど、やはり物価上昇目標との絡みにおいてこの実質実効為替レートについて言及されるのであれば私は分かるんです。

そうじゃないというふうにおっしゃるのであれば分かりませんけれども、そこはいかがですか。

○参考人(黒田東彦君) 
何度も申し上げて恐縮なんですが、実質実効為替レートの水準について、衆議院の委員会の方で質問された方が、この三十年来の数字を示されて実質実効為替レートがこれだけの円安の水準になっていますねということを言われたので、実質実効為替レートの水準がそうなっているということはそうなんですけれども、

ただ、それが名目為替レート、特に二国間の為替レートについて、現状の評価とか、あるいは先行きの見通しに何か関係してくるということは言えないと。

あくまでも理論的な、事後的な概念であって、それを先行きの物価や為替の見通しに使うということは難しいというふうに思います。

○中西健治君 
総裁、お言葉ですけれども、ここから更にという言葉を総裁は使っていらっしゃるんですよ。

今後のことについて、名目為替レートじゃないですよ、けれども、実質実効為替レートについて、ここから更に円安に振れていくことは普通考えるとなかなかありそうにないということかと思いますとおっしゃっていますから、やはり私は、物価上昇との、物価目標との関連で言う以外は少しこれだけだと当然誤解を生じる、当然そのような報道になっていくであろうということなんじゃないかなというふうに思います。

 では、総裁、このチャートを御覧になって、この教訓を導くとしたら、この間の発言についてじゃないですよ、教訓を導くとしたら、私は、十五年以上前からもっと積極的な金融緩和策を取って、デフレから脱却する、そうしたことを行っていくべきだったのではないか、こういうことを読み取るべきなんじゃないかと思いますが、総裁はいかがでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 
私自身、一九九八年から二〇一三年まで十五年続きのデフレというものを克服してデフレマインドを払拭しなければならないということは全くそのとおりだと思いますが、それは、過去十五年、二十年の物価の状況とか経済の状況を見ればある意味で明らかなことであって、

この実質実効為替レートから、先ほど申し上げたように、これは為替と物価としかも多国間の貿易関係と、三つの関係を含んでいますので、これから十五年続きのデフレが好ましくなかったということを引き出そうというのはこの理論的な概念とはちょっと離れているので、

あくまでも十五年続きのデフレというものはデフレ自体で問題であるし、経済の停滞につながったという意味でこれから脱却しなければいけないということはまさに委員と全く同じ意見ですけれども、それはこのグラフから出てくるというよりも、むしろ直接的に物価の動向や成長あるいは雇用等のデータから明らかなことではないかというふうに思っております。

○中西健治君 
この実質実効為替レートですけれども、これはよく使う人いるんです。

使う人というのは、今は表面的には円高に見えるけれども本当は円安だ、だからこれ以上円は安くなっちゃいけない、こんなような円高論者がよく使う指標かなというふうに思います。

市場関係者の中では、エコノミストでは使う人はいますけれども、実際にディーリングを行う人たちは全く見ていないということですし、長期的なものを示すといっても、企業が長期の為替レートを推測するときにもこれは全く使われていないということなんじゃないかと思います。

 その中で、この実質実効為替レートについての評価ですけれども、総裁は、迂遠なもの、金融政策を策定するに当たっては迂遠なものという評価をこの間はされていましたけれども、私自身は、もうこれは金融政策を検討する際には一顧だにしないものだということなんじゃないかと思いますが、どのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 
これは日銀総裁としてというよりも、実はこの実質実効為替レートというものが最初に開発されたのがIMFで開発されたわけですね。

その当時、私はIMFで勤務しておりましたので、それをめぐる議論とかその論文等を読んだことがあるわけです。

その後四十年ぐらいたって、委員御指摘のとおり、これから何かを読み取るとかするのは非常に難しいものであって、これはやはり、金融政策とかそういうものについては、これがすぐに何か役に立つとか言われても、それは役に立たない。

非常に迂遠なものだし、先ほど申し上げたように、為替の動きを占う面でも直接的にこの含意がはっきりしているというものでもありませんので、そういう意味で、私は、理論的なものとしてあるけれども、金融政策との関係ではやっぱり非常に迂遠なものであると思いますが、

ただ、この理論を開発した人を私はたまたま知っておりますので、全く無意味だ、一顧だにするなと言われると、そこまで言う必要はないと思いますが、ただ、金融政策にこれが何か非常に深い意味があるとか縁があるとか、そういうことはないという意味では全く同意見であります。


○中西健治君 質問を終わります。どうもありがとうございました。
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ご質問への回答です

2016.12.22

category : お役立ち?情報

ツイッターでご質問を頂戴したのですが、回答が長くてリツイートするととんでもないことになりそうなので、こちらに記載させて頂きました。


1)富田さんの言う 「普通の外国為替市場」 というのは、インターバンク取引のことでしょうか?

――はい。その通りです。IMMとはケタの違う規模の市場です。


2) 「インターバンクは基本的に直接取引なので、大口ファンドのポジションはわからない」
ということになるでしょうか?
  
――誰も他人のポジションは分かりません(細かい説明は後ろに書いておきますね)。

そもそも他人のポジションを知っても何の役にもたたない世界です。あまりに規模が大きすぎるので、 「大口ファンド」 と言ってもワン・オブ・ゼムです。
外国為替市場は、経済学が想定する完全競争市場に近いものです。ヘッジファンドの皆さんも、その事は百も承知なので非常に謙虚でしたよ。

余談です。
個別株の市場は為替に比べるとけた違いに小さいですから、ちょっと大玉を振ると影響力を行使できるので悪い事をしていると言う噂を聞いた事がありますが、、、、

――冒頭 「分からない」 と一般論でお答えしましたが、実は個別ファンドのポジションが分かっている人がいます。ファンドのリスク管理をしているプライムブローカーです。ただ、強烈な守秘義務の下にありますから、これが外に出る(漏れる)事はありません。
本にも書きましたが、ポジションどころか「○○が売った/買った」と言う情報を漏らしただけでクビになったディーラーがいます(事実です)。ましてや 「管理部門」 の人間にとっては、情報を漏らすインセンティブはゼロですね。

3) 「IMMやFX業者の統計から、小口取引の傾向はわかるが、為替の動きに影響ない」
ということになるでしょうか?

――はい。傾向は分かりますね。
ただ冒頭に申し上げた通り、 「完全競争市場」 で 「一部の人たちの取引の傾向」 が情報としてどこまで有益なのかは疑問です。

気にしても構わないのですが、世界は広いですよ。とんでもない金額を振り回している人達がウロウロしています。従って、こういった統計から 「投機筋は、、」 と一般化してしまうのは危険です。

ちょっと脱線します。
守秘義務があるのであまり細かいお話が出来ないのですが、私のいた金融機関では、ビッグデータ解析を使って、 「短期の投機筋」 と 「もう少し長いタイムスパンで動く中長期の投機筋」 のポジションをつかんでいました(もちろん完全ではありませんが)。
面白いことに、ある通貨に対して 「短期」 がロング、 「中長期」 がショートなどと正反対のポジションになっている現象が見られたりもしました。

こう言う世界を見ていますから、 「投機筋のポジションが○○なので、相場はこうなるだろう」 などと言っているのを聞くと 「あらま(笑)」 と思ってしまいます。

しかも公表されているIMMのポジションは、 「1週間前のある一時点」 の写真の様なものです。
「短期の投機筋」 の 「1週間前」 のポジションがどうのこうのと言うのは、変な会話だと思います。わたしには 「冷たい熱湯」 と言っている様にしか聞こえません。

コロコロ変わるからこそ、 「短期筋」 だと思います。百歩譲って参考にするならば「2週間前と1週間前の変化」ぐらいですね。いずれにせよ1週間前の昔話をされても困ってしまいます。

さらに言えば、 「知られても、実際にIMMで取引している人達に何の悪影響もない」 から公表しているのだと思います(思っていました)。
これに、どれほどの意味があるんでしょうね?


4)為替にも、先物主導で動くようなことがあるのでしょうか?(ヘッジファンドは、為替の先物を多用していますか?)

――「先物」 の定義の問題になってしまいますが、そもそも株式の様な 「先物取引」 は存在しません。似ているものとしては 「通貨インデックス」 だと思いますが、通貨インデックスそのものを取引する場はありませんね。

「取引所」 があればなんとかなるかもしれませんが、外国為替取引所と言う 「物理的に限られた場所」 が存在せず、不特定多数の参加者が勝手につながった電子空間(昔は電話空間でしたが 笑)にあるバーチャルな市場ですから無理ですね。
と言う事で、イメージされている様な意味での 「先物主導」 は存在しません。

もう少しご説明すると、そもそも個人の皆さんが店頭で外貨を売ったり買ったりして、その場で決済するのが 「現物」 だとしたら、すべての外国為替取引は 「先物」 となります。
売買の基本となっているスポット市場の受け渡しは「2営業日後」ですから、先の話ですよね。

いずれにせよ 「2営業日後受け渡しのスポット取引」 以外の取引をする意味もなければインセンティブもなく、そもそも物理的に不可能と言う事になります。

これに反しているのがIMMです。
「2営業日後」 ではなく、 「特定の受け渡し日」 を設定して差金決済を条件として取引をしています。
我々が実務で一般的に使う 「先物取引」 と混乱を生じない様に、この種の取引を 「先渡し取引」 と呼ぶ事もありました(ほとんど無視していたので、この用語を知らないディーラーも多いと思います)。
英語だとフォワード (forward) とヒューチャー (currency futures) と、明らかに名称が違いますから分かり易いですね。

いずれにせよ、圧倒的に大きいのは 「普通の外国為替市場」 ですから、彼らはこちらに合わせる必要があります。そうしないと裁定取引でボコボコにやられますから(笑)。90年頃まで、彼らをカモにして大儲けさせて頂いていましたよ。

毎日 「2営業日後から設定している受け渡し日までのスワップポイントを計算して、普通の外為市場のスポット取引の水準にそれを足したり引いたりして換算しながら」、しかも逆数(1円=●.●●●●ドル)で取引する なんて、アホらしいと思いませんか?

インターバンクと同じ表記と同じ2営業日後で売買が出来る個人のFX取引の方が、ずっと恵まれていると思います。

80年代に 「鯨の皆さん。そんなタライじゃなくて、こちらにいらっしゃい!」 と営業して成功した事は本に書いた通りです。だから、 「あんなところに大口のヘッジファンドはいません」 と断言出来ると言う訳です。

いない理由には、プライムブローカーと言うシステムの問題もありますが、いずれにせよあそこにはいませんね。

為替相場予想って何?

2016.12.20

category : お役立ち?情報

「相場予想」を語る前に、昨年出版した 「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」 と言う本の 「あとがき」 のオリジナルをご紹介させて頂きます。

紙数の関係で、実際に出版したものは短縮版となっています。確かにちょっと長いですね(苦笑)

+++++++++
 プロ野球の選手は、 「プロの素晴らしいプレーを見に来てください」 と言います。この場合の 「プロ」 には、 「超人」 へのあこがれをくすぐる心地よい響きがあります。
 わたしはプロのディーラーでした。ただ、そんな超人ではありません。 「気がついたら、三十年以上も泳いでいました」 と言うだけのシーラカンスです。

 全盛期でもメカジキやマグロのように、速く泳げた訳ではありません。 「せめてカツオのレベルに」 とか 「マンボウやヒラメに抜かれてたまるか」 などと、必死にそして最後までヒレを動かしていただけです。 「長くいたので、いろいろとくわしいですよ」 と言うこと以外に、これといった取り柄はありません。

 引退したあとは、外国為替に限らず金融市場に関係することからは一切手を引いていました。外国為替市場は、人生の大半をすごしてきた場所です。離れがたい思い出の地です。しかし、老兵を自覚した頃から、若いみなさんの前からはいさぎよく消えるべきだと考えていました。

 実は、いつもかよっていたオフィスの前を、今も通っています。旧知の国会議員のお手伝いの為に、永田町にお邪魔する時のルートに当たっているからです。ただ、ディーリング・ルームのドアをたたいたことは、一度もありません。

 もちろんFXに手を出すこともありません。レッスン・プロがオーガスタ (ゴルフのマスターズ・トーナメント) に出場したら椿事です。ウィンブルドンでプレーをするのは、錦織圭選手です。マイケル・チャンコーチではありません。

 そうやって距離を置いていました。

 しかし、今の外国為替市場、特にあまり知らなかったFXの状況を目にする機会に偶然遭遇してしまいました。そして思わず 「ひどい」 と言ったあと、言葉を失いました。

 リスクをとれば、損失が出ることはあります。しかし、本当のことを知らない内に、みなさんのおカネが九分九厘消えてしまうような勝負はフェアではありません。そのことをお伝えする為に、この本を書きました。 「為替の業界人」 と言う入れ墨は、まだしっかりと入ったままです。きっちりと仕事をさせて頂きました。

 本書で 「プロ」 と言う単語を使うことには、非常に抵抗がありました。わたしは、ただの 「くわしい人」 「長くいた人」 です。

 しかし、自分自身を含む業界人を、あえて 「プロ」 と表現しました。業界内の人間と一般のみなさんの置かれている環境には、どうしても克服することができない大きな差があります。その事実を、みなさんの記憶にしっかりととどめて頂きたかったからです。

 株式市場は歴史が長いだけに、 「株で大損をして、先祖伝来の家や土地を手放した」 「一家離散になった」 などと言うことが小説や映画、演劇などに再三登場してきました。そのせいでしょうか、自分の子供に 「株にだけは手を出しちゃいけませんよ」 と教える親御さんも多いようです。若干いきすぎだとは思いますが、いたし方のないことかもしれません。

 一方、歴史の浅いFXに関しては、世間のみなさんのあいだに、そのような負の経験の蓄積がありません。 「FXにだけは手を出しちゃいけませんよ」 と教える親御さんは、まだいらっしゃらないでしょう。

 しかし、プロの世界では、すでに大勢の犠牲者が出ています。負の経験の蓄積は、もはや十分すぎるほどにあります。そのことを正しく伝えるのが、変動相場制移行以来四十年あまりの歴史を見てきた人間の責任です。

 あたかもFXで簡単に稼げるかのような、そんな幻想をいだかせることは慎むべきです。プロは素人をあざむいてはいけません。

 もちろん、これからも 「FXで億万長者」 と言う個人はかならず出てきます。しかしこの方の誕生は、数百万人と言う巨大な母集団から確率論的に推定されていることです。次は、今この本を読んでいらっしゃるあなたかもしれません。

 ただ、その幸運が舞い降りる確率は、宝くじに当たるのと似たようなものです。

 あらためて申し上げます。悪いことは言いません。FXには近づかないでください。みなさんの来るべきところではありません。

++++++++++++

長々と引用したのは、私の基本的なスタンスをご理解頂く為です。

あくまで 「FXには近づかないでください」です。

ただ、世の中 「分かっちゃいるけどやめられない!」 ものは多いですよね。
たとえば、体に悪いと分かっていても、私はお酒がやめられません。結構沢山飲みます。それと同じ様に、なかなかFXから足を洗えない方もいらっしゃいますよね。

この先はそんな方の為のメモです。メモですからあくまで「ご参考」程度にお読みください。

まず、 「FXが資産運用の対象となる」 と言う誤った認識を持たない様にお願いいたします。

株や債券は 「資産」 ですが、為替は 「単なる2つの通貨の交換比率」 でしかありません。丁半バクチみたいなものですから、投機の対象とはなっても投資には不向きです。


また、 「為替相場の予想ができる」 などと言うのは幻想です。

少なくとも私自身は、「相場予想で成功した」と言う記憶がありません。ましてや引退していますから、「為替相場はどうですか?」と聞かれても「分かりません」としかお答えしていません。

ただ、 私の様なボンクラはさて置き、 「為替で相場を張って成功した人」 はいますから変ですよね。あくまで私の個人的な経験則ですが、成功した人のタイプは3つです。


1)天才君
なぜか相場が読めてしまう人がいます。本にも書いたのですが、「上値が重い」「下が固い」「抜けた!」と言った事が感覚的に分かる人達です。
私の様な2流のディーラーには、何で重くて、固くて、抜けたのか全然分かりませんでしたが(苦笑)。

ちなみに、彼らは数年間華々しく活躍した後、「相場とズレた」と異口同音に語って業界を去っていきました。あくまで第六感の世界なのだと思います。


2)局地戦の戦士
ファンダメンタルズ型のヘッジファンドや、為替そのものでの収益を狙っているプロの運用者は、このタイプです。

「『為替相場の予想ができる』 などと言うのは幻想です」 と書きましたが、これは「汎用性のある予想など不可能だ」と言う意味です。
たとえば、24時間、3日、1週間、1か月、半年、1年の相場のすべてに適用できる予想手法や予想モデルなど、作れるはずがありません。彼らもそう言っていました。私もそう思います。

しかし、彼らは 「勝負するタイムスパンをきちんと設定すれば、その間に考慮すべき情報や分析手法、どう言う形で相場に突っ込むかと言った手法は自ずと限られてくる」 と考えています。

ありとあらゆる事が為替相場に影響してくるのですが、その中から 「想定したタイムスパンに限って影響の強そうなもの」 を選び出すと言う作業をする訳です。ある種の 「単純化」 とも言えるかもしれません。
さらに、それに最適なトレーディング・テクニックを組み合わせると言う訳ですね。

「単純化」 と書いてしまいましたが、実は膨大な作業をしています。いずれにせよ、よくメディアで専門家が語っている 「ドル金利が上がったから、、」 「株が買われたから、、」 などとは違う次元の世界である事は間違いありません。

私がカスタマー・ディーラーとしてお手伝いをしていたのは、このタイプの皆さんです。


3)純粋モデル型(システム・トレード型)
数学や物理学、統計学、経済物理学などなどの天才を集めたヘッジファンドがやっている手法です。

為替取引がシステム化&デジタル化し、コンピューターの能力が飛躍的に高まった為、10年前には想像もつかなかった解析が可能となっています。
彼らは、我々が 「ティック・データ」 と呼んでいる 「全取引データ」 を使います。いわゆるビッグ・データ解析ですね。

実際にどうやっているのかは教えてもらえなかった、、、、と言うより、聞いたんですが正直言って理解不能でした。一応、私は理系だったんですが(苦笑)。

従って、これは私の推測でしかありませんが 「膨大なデータから統計的に有意なパターンなどを探し出し、それが再び出現する(データはあくまで過去のものですから)確率に照らし合わせてポジションをとる」 「その判断にはA.I.を活用し、解析にはスーパー・コンピューターも使う」 様です。
理解不能だったので、この程度のご説明しか出来ませんm(__)m


何だかとりとめが無くなってしまいましたが、今世間で流れている様な 「相場予想」 とは無縁だと言う事はご理解頂きたいと思います。

ましてや、 「ヘッジファンドが仕掛けた」 「IMMのポジションから投機筋は、、」 「移動平均線が、、RSIが、、フィボナッチが、、」 などと言った世界など、どこにもありません。
「テクニカル的には、、」 なんて、少なくとも為替の世界では21世紀に入った頃には死語だったはずです。

今、メディアに出てきている専門家の話している事は、私が1980年代に話していた事と全く同じです。だから、先日書いた通り 「ガラパゴス」 と言う事になります。

ガラパゴス諸島の皆さん限定の外為市場を作れば、面白いかもしれませんね。

ガラパゴス化した東京外為市場

2016.12.02

category : お役立ち?情報

先日、最後まで東京で頑張っていた昔の同僚が、「シンガポールでファンドをやります」 とわざわざ議員会館まで挨拶に来てくれました。

「東京じゃダメ?」
「ダメです」
「規制とか制度の問題?」
「違います」
「だったら、東京でやろうよ」
「夢がないんですよ」
「?」
「私が若い頃には、『あんな風になりたい』 と憧れたり、尊敬する人達が市場にいました。でも、引退したり東京を離れたりしてしまって、もう誰もいません。そんなところじゃつまらないですよ」
「シンガポールには、そう言う人がいる?」
「はい。富田さんだって、ご存知じゃないですか。最先端でとんがっている人達のそばにいないと、進化しませんから、、」
「たしかに、、、」
「東京は、もうガラパゴスですよ」


たしかに東京外国為替市場の関係者、特に金融機関の人間の発想や発言、分析などは、四半世紀以上前とほとんど変わっていません。要するに25年以上、全く進化していないと言う話です。

たとえば、

「ヘッジファンドが休み前に手仕舞う」

「テクニカル的に半値戻しがメドになる」

「IMMのポジションでヘッジファンドの動きが分かる」

「移動平均線からのかい離が大きいので調整が入る」

「RSIが80を超えたから調整が入る」

こんな話をヘッジファンドや機関投資家にしたら、即日出入り禁止=取引停止です。

ただ、日本の金融機関は、元々彼らから全く相手にされていませんのでその心配はありません。

しかも 「日本語」 と言うバリアで守られているので、馬鹿なことをいくら言っても 「おかしい」 と指摘される心配もありません。

国際金融は、非常に残念な事に完全に英語の世界です。ただ、そのおかげで 「守られている」 と言う情けない話です。

要するに、「残念ながら、外界の刺激を受けて進化するチャンスが無かった」 と言うことですね。

彼の言う通り、これはもう 「ガラパゴス諸島」 と呼ぶべきでしょう。


そんなガラパゴスの珍獣たちが、メディアで情報らしきものを垂れ流しています。

視聴者や読者の皆さんは、それがどんなにおかしなものかを知る機会がありません。わたしがいくらブツブツつぶやいても、ほとんど届いていないでしょう。

メディアの裏に関しては、前回某TV局のプロデューサーとの実話でご紹介した通りです。

「これでもメディアに出てくる『専門家』を信じますか?」


あれが世界の外国為替市場の関係者の標準的な考え方だなんて、絶対に勘ちがいしないで下さいね。

ガラパゴスですよ。

これでもメディアに出てくる「専門家」を信じますか?

2016.09.07

category : お役立ち?情報

ようやく選挙モード・戦闘モードから通常モードに戻ったので、旧知の某TV局のプロデューサーが祝勝会も兼ねて食事に誘ってくれました。

(プロデューサー:以下P氏) 「本の中で、『金融機関とメディアは持ちつ持たれつ』って書いてましたよね?」
(富田) 「ええ。もっと言うと、『中身なんてどうでもよくて、会社の名前が出れば良い。番組枠とか紙面が埋まれば良い』 と言う世界でしょ?」
(P氏) 「実はその通りなんですよ」
(富田) 「絶対にまずいですよ。一般の人は、『真っ当なメディアで流れた』 と言うだけで信じちゃいますから」

<メディアはガセネタ垂れ流し>
(P氏) 「発言内容の質を評価できるディレクターがいないんですよ。金融市場の話になると、完全にお手上げですから拝聴するしかありません」
(富田) 「大手のメディアって、デパートと同じだと思うんですよ。『三越が売っているのなら一級品だ』 って信用しますよね。あれは、『三越がちゃんと中身をチェックしているから』 と言う信頼感に基づくものでしょ。それなのに、『中身を評価できない』 じゃ困りますよ」
(P氏) 「でも、それが現実なんですよ。『市場で本当に何が起きているのかは、誰も分からない』 って、富田さんも書いてたじゃないですか」
(富田) 「あれは、『全体像』 の話ですよ。断片的ではあっても、『確かな事』 はあります。その範囲内で、『きちんと解説と分析をする。想像で物は言わない』 と言うのがプロの世界の常識です。いい加減なことを言ったら、取引停止処分をくらいますし退場処分もありますから」
(P氏) 「視聴者には、『いい加減かどうか』 の判断がつきませんから、そう言った自浄作用は働かないですね。こちらも番組枠を埋める方が先決なんで」

<まともな専門家は出てくれない>
(富田) 「それにしても、もう少しまともな専門家を選べないんですか?○○さんとか、××さんだったら、きちんとした話をしてくれるはずですよ」
(P氏) 「富田さんもそうでしたが、そう言う方は 『まとまった時間をくれ』 とおっしゃるんですよ。短い時間で断片的な話をして誤解を招きたくないからだと思うんですが、こちらも常に10分とか15分、ましてや30分と言った枠は出せないんで、、、、」
(富田) 「それにしても、最近は質の低下がひどくないですか?△△銀行とか□□証券なんて、信用度が低いんでメジャーな外国為替市場には参加出来ないですよ。JPモルガンとは取引出来ませんし、ヘッジファンドや機関投資家からは相手にされていません。個人投資家と同じ環境にある会社の人間が、『専門家でございます』 って出てくるのはおかしいですね]

<出演者を売り込む金融機関>
(P氏) 「実は金融機関から、『ウチの人間を出演させてくれ』 と言う売り込みがあるんですよ」
(富田) 「それって単なる会社の宣伝ですよね」
(P氏) 「そうですね。ただ、こっちとしても枠を埋めてくれる便利さがあるもんで、ついついお願いしちゃうんですよ」
(富田) 「だ・か・ら、そんな人を出したら、△△銀行とか□□証券みたいな三流・四流のプレーヤーに、メディアがのしをつけて権威づけしちゃうことになりますよ。結果的に視聴者をだましてません?」
(P氏) 「うーーん、厳しいですね。現役時代と変わってないですね」

<大手も同じ>
(富田) 「その売込みって、もしかして大手もやってませんか?」
(P氏) 「分かります?」
(富田) 「なんとなく。だって、◆◆社の◇◇さんって、とんでもなく予想が外れて、その為に分析も解説も支離滅裂になっているのにあっちこっちに出続けてたでしょ?ご本人は出たくなかったと思いますよ。『ストラテジストは予想屋じゃない』 事に気付いてた感じもしましたし」
(P氏) 「当たりです。会社から『出してくれ』 って来てたんですよ」
(富田) 「気の毒ですね。あの方のストラテジストとしての命取りにならないと良いですが、、、」
(P氏) 「最近はメディアへの露出が減りましたね。『外れたら人前に出ない』 のが、ストラテジストが長生きする秘訣かもしれませんから正解ですよ。たとえば◎◎さんとか、、、」
(富田) 「でも最大の被害者は視聴者ですよ。信じて相場張ったら、間違いなくやられてますから」



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