外国為替市場の不都合な真実

ヘッジファンド等のプロのお客さんや同僚のディーラーは、「専門家」の予想を全く聞いていません。メディアに流れている情報は想像と妄想、ねつ造と勘違いばかりです。なぜ皆さんは信じるのですか?

プロフィール

富田 公彦

Author:富田 公彦
中西けんじ参議院議員(自由民主党:神奈川県選挙区)秘書
元JPモルガン・チェース銀行為替資金本部副本部長
1980年東京大学経済学部卒
富士銀行入行(1986年退職)
以後、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ステート・ストリートなど米系金融機関に通算26年勤務
2013年金融市場から引退
ケイマン籍ヘッジファンドの経営には失敗(^_^;)シマッタ

<著書>
「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」
(経済評論家・山崎元氏の書評)

「為替ディーラーの常識非常識」(共著)

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ちゃんと議事録を読みましょうね(黒田ラインなんてありません)

2016.01.26

category : トンデモ情報

SMBC信託銀行プレスティアの尾河さん

「125円の黒田ラインが意識され、、、」

6月10日の衆院財務金融委員会の質疑の事ですね。

議事録をお読みになりましたか?

こちらが「公式の議事録」です。
国会の答弁と言うのは、この様に公式の議事録が作成されて残る非常に重たいものです。

前と後ろをかなり切ったのですが、まだ長いですね。
逆に言えば、延々と1時間以上議論をしていた中で出た発言なので、前後の文脈も重要だと言う事です。

++++++++++++++2015年6月10日 衆議院財政金融委員会+++++++++++
○前原委員 
それでは伺いますが、今の為替相場は日本のファンダメンタルズを反映しているとお考えなのかどうなのか、その辺についてお答えください。

○黒田参考人 
この点も、私が具体的に相場の水準について、ファンダメンタルズを反映している、あるいは反映していないというふうにお答えするのは差し控えたいと思いますが、為替相場の動きだけを過去ずっと追ってみますと、現在の水準というのは、リーマン・ショック前の水準にある意味で戻った。
ただ、リーマン・ショック前の水準が絶対的に正しい水準であるという根拠も別にあるわけではありませんので、リーマン・ショック後、急速に円高が進み、それがこの三年弱の間に是正をされたということではあると思います。

○前原委員 
図一の下の右のグラフをごらんいただきたいんですが、これは実質実効為替レートというものとドル・円を並べたものでありまして、今、黒田総裁がリーマン・ショック後とおっしゃいましたけれども、プラザ合意あたりからずっと、この実質実効為替レートとドル・円というものをグラフにしたものでございます。
 実効為替レートということは、下にも書いてございますけれども、特定の二通貨間の為替レートを見ているだけじゃなくて、相対的な通貨の実力をはかるための総合的な指標ということで、これは日銀のホームページからとらせていただいたものであります。

 理論的に実質実効為替レートというものを考えたときに、インフレ率が高い国の通貨はインフレ率が低い国の通貨よりも安くなるということでありますので、緩やかなインフレが続くアメリカと、そしてバブル崩壊後以降長引くデフレを長らく経験している日本を比較すると円高に振れるというのは仕方がないわけでありまして、言ってみれば、バブル崩壊後、茶色の折れ線グラフと青の折れ線グラフがある意味で乖離してきているというところの背景がそこにあるということであります。

 実質ということの意味においては、例えば同じ為替レートなら実質的に今のインフレ率というものを勘案すると円安になる、こういうことになるわけであります。

 この相対的な通貨の実力をはかるための総合指標ということを出させてもらったわけでありますが、この実質実効為替レートというものがある意味で一九八五年のプラザ合意前と同水準になったということについてどう評価するかというところの議論をさせていただきたいと思います。
 この点について、黒田総裁のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○黒田参考人 
これはなかなか難しい問題でありまして、委員御指摘のとおり、実質実効為替レートと申しますのは、二国間の為替レートでなくて、多国間のいろいろな通貨との関係を見た上で、普通は貿易ウエートでウエートづけしてやるものが実効為替レートであります。さらに、実質ということは、インフレ率の違いまで考慮したものでございます。

 したがいまして、ある意味でいいますと価格面で見た競争力みたいなもののようにも見えますし、他方では委員御指摘のように実力とも見えるかもしれませんが、いずれにせよ、この指標自体はIMF等が開発して広く使われている指標ではありますけれども、そのときそのときの為替の安定をどのように図るかという問題とか、あるいはそのときそのときの金融政策についてどういう政策をとるべきかということについては、やや迂遠な指標であるということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、確かに、実質実効為替レートで見ますと、今はかなりの円安の水準になっているということは事実でございます。

++++++++++++++++++++++++++

この前も長いですが、この後も延々と質疑が続きます。

これが黒田日銀総裁と民主党の前原議員のやりとりそのものです(一言一句間違っていません)。

辞書を引くと分かりますが、「迂遠(うえん)」とは

「まわりくどいさま。また、そのため、実際の用に向かないさま」

です。
つまり「黒田総裁は実質実効レートなんて役に立たない」と言っています。

ただ、前原議員がチャートを出していたので、「実質実効レートで見ると円安」に見える事を認めただけです。

このやりとりで為替相場が動いてしまったので、次の週の参議院財政金融委員会で、中西議員がこの様なやりとりをしました。

++++++++++2015年6月16日 参議院財政金融委員会++++++++++++++
○中西健治君 
この実質実効為替レートですけれども、これはよく使う人いるんです。使う人というのは、今は表面的には円高に見えるけれども本当は円安だ、だからこれ以上円は安くなっちゃいけない、こんなような円高論者がよく使う指標かなというふうに思います。

市場関係者の中では、エコノミストでは使う人はいますけれども、実際にディーリングを行う人たちは全く見ていないということですし、長期的なものを示すといっても、企業が長期の為替レートを推測するときにもこれは全く使われていないということなんじゃないかと思います。

その中で、この実質実効為替レートについての評価ですけれども、総裁は、迂遠なもの、金融政策を策定するに当たっては迂遠なものという評価をこの間はされていましたけれども、私自身は、もうこれは金融政策を検討する際には一顧だにしないものだということなんじゃないかと思いますが、どのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 
これは日銀総裁としてというよりも、実はこの実質実効為替レートというものが最初に開発されたのがIMFで開発されたわけですね。その当時、私はIMFで勤務しておりましたので、それをめぐる議論とかその論文等を読んだことがあるわけです。

その後四十年ぐらいたって、委員御指摘のとおり、これから何かを読み取るとかするのは非常に難しいものであって、これはやはり、金融政策とかそういうものについては、これがすぐに何か役に立つとか言われても、それは役に立たない。非常に迂遠なものだし、先ほど申し上げたように、為替の動きを占う面でも直接的にこの含意がはっきりしているというものでもありませんので、そういう意味で、私は、理論的なものとしてあるけれども、金融政策との関係ではやっぱり非常に迂遠なものであると思いますが、

ただ、この理論を開発した人を私はたまたま知っておりますので、全く無意味だ、一顧だにするなと言われると、そこまで言う必要はないと思いますが、ただ、金融政策にこれが何か非常に深い意味があるとか縁があるとか、そういうことはないという意味では全く同意見であります。

○中西健治君 
質問を終わります。どうもありがとうございました。

+++++++++++++++++++++++++++++++
色々な修飾語が入っていますが、

「実質実効レートは、金融政策の役に立たない」

と言い切っている事が分かります。

この質疑の後、日銀の国会担当の方が、「真っ当な質疑をして頂いた」と非常に喜んでいました。

つまり、日銀内部では、6月10日の総裁の発言が「誤って」伝わった事自体が問題視されていたと言う事です。

金融市場に明るい中西議員のお陰で、それを「正しく修正する答弁が出来た」ので、総裁以下日銀の皆さんが大喜びした訳です。

中西議員も、前の週のアホな質疑で相場が動いた事に腹を立てていたので、きちんとした質疑が出来た事を喜んでいました。

黒田ラインなんて、いい加減な線を引かないで下さい。


ちなみに「この理論を開発した人を私はたまたま知っておりますので、一顧だにするなと言うと、」と黒田総裁が苦笑いしながら言ったので、委員会室全体が大爆笑となりました。

「一週間の間誤解され続けた後で、ようやく解放された」と言ううれしさが、全身からにじみ出ていましたので、、、
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