外国為替市場の不都合な真実

ヘッジファンド等のプロのお客さんや同僚のディーラーは、「専門家」の予想を全く聞いていません。メディアに流れている情報は想像と妄想、ねつ造と勘違いばかりです。なぜ皆さんは信じるのですか?

プロフィール

富田 公彦

Author:富田 公彦
中西けんじ参議院議員(自由民主党:神奈川県選挙区)秘書
元JPモルガン・チェース銀行為替資金本部副本部長
1980年東京大学経済学部卒
富士銀行入行(1986年退職)
以後、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ステート・ストリートなど米系金融機関に通算26年勤務
2013年金融市場から引退
ケイマン籍ヘッジファンドの経営には失敗(^_^;)シマッタ

<著書>
「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」
(経済評論家・山崎元氏の書評)

「為替ディーラーの常識非常識」(共著)

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為替相場予想って何?

2016.12.20

category : お役立ち?情報

「相場予想」を語る前に、昨年出版した 「なぜ専門家の為替予想は外れるのか」 と言う本の 「あとがき」 のオリジナルをご紹介させて頂きます。

紙数の関係で、実際に出版したものは短縮版となっています。確かにちょっと長いですね(苦笑)

+++++++++
 プロ野球の選手は、 「プロの素晴らしいプレーを見に来てください」 と言います。この場合の 「プロ」 には、 「超人」 へのあこがれをくすぐる心地よい響きがあります。
 わたしはプロのディーラーでした。ただ、そんな超人ではありません。 「気がついたら、三十年以上も泳いでいました」 と言うだけのシーラカンスです。

 全盛期でもメカジキやマグロのように、速く泳げた訳ではありません。 「せめてカツオのレベルに」 とか 「マンボウやヒラメに抜かれてたまるか」 などと、必死にそして最後までヒレを動かしていただけです。 「長くいたので、いろいろとくわしいですよ」 と言うこと以外に、これといった取り柄はありません。

 引退したあとは、外国為替に限らず金融市場に関係することからは一切手を引いていました。外国為替市場は、人生の大半をすごしてきた場所です。離れがたい思い出の地です。しかし、老兵を自覚した頃から、若いみなさんの前からはいさぎよく消えるべきだと考えていました。

 実は、いつもかよっていたオフィスの前を、今も通っています。旧知の国会議員のお手伝いの為に、永田町にお邪魔する時のルートに当たっているからです。ただ、ディーリング・ルームのドアをたたいたことは、一度もありません。

 もちろんFXに手を出すこともありません。レッスン・プロがオーガスタ (ゴルフのマスターズ・トーナメント) に出場したら椿事です。ウィンブルドンでプレーをするのは、錦織圭選手です。マイケル・チャンコーチではありません。

 そうやって距離を置いていました。

 しかし、今の外国為替市場、特にあまり知らなかったFXの状況を目にする機会に偶然遭遇してしまいました。そして思わず 「ひどい」 と言ったあと、言葉を失いました。

 リスクをとれば、損失が出ることはあります。しかし、本当のことを知らない内に、みなさんのおカネが九分九厘消えてしまうような勝負はフェアではありません。そのことをお伝えする為に、この本を書きました。 「為替の業界人」 と言う入れ墨は、まだしっかりと入ったままです。きっちりと仕事をさせて頂きました。

 本書で 「プロ」 と言う単語を使うことには、非常に抵抗がありました。わたしは、ただの 「くわしい人」 「長くいた人」 です。

 しかし、自分自身を含む業界人を、あえて 「プロ」 と表現しました。業界内の人間と一般のみなさんの置かれている環境には、どうしても克服することができない大きな差があります。その事実を、みなさんの記憶にしっかりととどめて頂きたかったからです。

 株式市場は歴史が長いだけに、 「株で大損をして、先祖伝来の家や土地を手放した」 「一家離散になった」 などと言うことが小説や映画、演劇などに再三登場してきました。そのせいでしょうか、自分の子供に 「株にだけは手を出しちゃいけませんよ」 と教える親御さんも多いようです。若干いきすぎだとは思いますが、いたし方のないことかもしれません。

 一方、歴史の浅いFXに関しては、世間のみなさんのあいだに、そのような負の経験の蓄積がありません。 「FXにだけは手を出しちゃいけませんよ」 と教える親御さんは、まだいらっしゃらないでしょう。

 しかし、プロの世界では、すでに大勢の犠牲者が出ています。負の経験の蓄積は、もはや十分すぎるほどにあります。そのことを正しく伝えるのが、変動相場制移行以来四十年あまりの歴史を見てきた人間の責任です。

 あたかもFXで簡単に稼げるかのような、そんな幻想をいだかせることは慎むべきです。プロは素人をあざむいてはいけません。

 もちろん、これからも 「FXで億万長者」 と言う個人はかならず出てきます。しかしこの方の誕生は、数百万人と言う巨大な母集団から確率論的に推定されていることです。次は、今この本を読んでいらっしゃるあなたかもしれません。

 ただ、その幸運が舞い降りる確率は、宝くじに当たるのと似たようなものです。

 あらためて申し上げます。悪いことは言いません。FXには近づかないでください。みなさんの来るべきところではありません。

++++++++++++

長々と引用したのは、私の基本的なスタンスをご理解頂く為です。

あくまで 「FXには近づかないでください」です。

ただ、世の中 「分かっちゃいるけどやめられない!」 ものは多いですよね。
たとえば、体に悪いと分かっていても、私はお酒がやめられません。結構沢山飲みます。それと同じ様に、なかなかFXから足を洗えない方もいらっしゃいますよね。

この先はそんな方の為のメモです。メモですからあくまで「ご参考」程度にお読みください。

まず、 「FXが資産運用の対象となる」 と言う誤った認識を持たない様にお願いいたします。

株や債券は 「資産」 ですが、為替は 「単なる2つの通貨の交換比率」 でしかありません。丁半バクチみたいなものですから、投機の対象とはなっても投資には不向きです。


また、 「為替相場の予想ができる」 などと言うのは幻想です。

少なくとも私自身は、「相場予想で成功した」と言う記憶がありません。ましてや引退していますから、「為替相場はどうですか?」と聞かれても「分かりません」としかお答えしていません。

ただ、 私の様なボンクラはさて置き、 「為替で相場を張って成功した人」 はいますから変ですよね。あくまで私の個人的な経験則ですが、成功した人のタイプは3つです。


1)天才君
なぜか相場が読めてしまう人がいます。本にも書いたのですが、「上値が重い」「下が固い」「抜けた!」と言った事が感覚的に分かる人達です。
私の様な2流のディーラーには、何で重くて、固くて、抜けたのか全然分かりませんでしたが(苦笑)。

ちなみに、彼らは数年間華々しく活躍した後、「相場とズレた」と異口同音に語って業界を去っていきました。あくまで第六感の世界なのだと思います。


2)局地戦の戦士
ファンダメンタルズ型のヘッジファンドや、為替そのものでの収益を狙っているプロの運用者は、このタイプです。

「『為替相場の予想ができる』 などと言うのは幻想です」 と書きましたが、これは「汎用性のある予想など不可能だ」と言う意味です。
たとえば、24時間、3日、1週間、1か月、半年、1年の相場のすべてに適用できる予想手法や予想モデルなど、作れるはずがありません。彼らもそう言っていました。私もそう思います。

しかし、彼らは 「勝負するタイムスパンをきちんと設定すれば、その間に考慮すべき情報や分析手法、どう言う形で相場に突っ込むかと言った手法は自ずと限られてくる」 と考えています。

ありとあらゆる事が為替相場に影響してくるのですが、その中から 「想定したタイムスパンに限って影響の強そうなもの」 を選び出すと言う作業をする訳です。ある種の 「単純化」 とも言えるかもしれません。
さらに、それに最適なトレーディング・テクニックを組み合わせると言う訳ですね。

「単純化」 と書いてしまいましたが、実は膨大な作業をしています。いずれにせよ、よくメディアで専門家が語っている 「ドル金利が上がったから、、」 「株が買われたから、、」 などとは違う次元の世界である事は間違いありません。

私がカスタマー・ディーラーとしてお手伝いをしていたのは、このタイプの皆さんです。


3)純粋モデル型(システム・トレード型)
数学や物理学、統計学、経済物理学などなどの天才を集めたヘッジファンドがやっている手法です。

為替取引がシステム化&デジタル化し、コンピューターの能力が飛躍的に高まった為、10年前には想像もつかなかった解析が可能となっています。
彼らは、我々が 「ティック・データ」 と呼んでいる 「全取引データ」 を使います。いわゆるビッグ・データ解析ですね。

実際にどうやっているのかは教えてもらえなかった、、、、と言うより、聞いたんですが正直言って理解不能でした。一応、私は理系だったんですが(苦笑)。

従って、これは私の推測でしかありませんが 「膨大なデータから統計的に有意なパターンなどを探し出し、それが再び出現する(データはあくまで過去のものですから)確率に照らし合わせてポジションをとる」 「その判断にはA.I.を活用し、解析にはスーパー・コンピューターも使う」 様です。
理解不能だったので、この程度のご説明しか出来ませんm(__)m


何だかとりとめが無くなってしまいましたが、今世間で流れている様な 「相場予想」 とは無縁だと言う事はご理解頂きたいと思います。

ましてや、 「ヘッジファンドが仕掛けた」 「IMMのポジションから投機筋は、、」 「移動平均線が、、RSIが、、フィボナッチが、、」 などと言った世界など、どこにもありません。
「テクニカル的には、、」 なんて、少なくとも為替の世界では21世紀に入った頃には死語だったはずです。

今、メディアに出てきている専門家の話している事は、私が1980年代に話していた事と全く同じです。だから、先日書いた通り 「ガラパゴス」 と言う事になります。

ガラパゴス諸島の皆さん限定の外為市場を作れば、面白いかもしれませんね。
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